THE ENTERTAINMENT DIARIES

はじめましてM&Oです。元俳優が俳優の目線で綴るエンターテインメントの表と裏

現代の日本映画に喝を入れた作品 綾野剛に拍手を送りたい映画『日本で一番悪い奴ら』映画レビュー

白石和彌監督の骨太さは今の日本映画に必要

先日レビューにも書いた『孤狼の血』が良かったので、観てそうで観てなかった『日本で一番悪い奴ら』を鑑賞。ちょうど白石和彌監督繋がりってこともあり。

まず率直な感想としては、面白かったです!!いいじゃないですか、こういう日本映画。大ヒットは確実に難しいでしょうが、爪痕をしっかり残している作品だと思います。

 

ただ、こういうテーマって映画人はとっても好きそうなんだけど、このキャストはどうしてしまったんでしょう?別に出ているキャストがダメとか物足りないというわけではないのですが、もっと豪華キャストが集結してもよさそうな作品なのになぁと思いました。ていうか「出たい!」っていう俳優が多そうな内容だなと思ったのですが意外と脇を固めるキャストは地味でしたね。

今の日本映画のお笑い芸人に頼る謎の傾向は何なんでしょうか。これが面白い要素を役的に求められているとかならわかるんですが、終始真面目な感じの役で芸人さんを起用する理由が僕いまいちわからないんですよね。芸人さんはそれなりにこなしてしまうのはわかるのですが、それはコメディできる人たちだから僕からしたら当然というか。コメディ出来る人はシリアスな芝居なんてお茶の子さいさいでしょう。だからこそ別に俳優が出ればいいじゃん!って思っちゃうんですよね。いやむしろ俳優の立場からすると、俳優を使ってくれよ!って感じなんです。何も今回の作品だけで言ってるわけじゃなくてずっと思ってることなので、今回出てる芸人さんのことばかりいってるわけではありません。これについてはかなり長い文章になりそうなので今度このことをテーマにじっくり書きたいと思います。

 

作品としては、いろいろな描写もかなり頑張ったのではないでしょうか。コンプライアンスがこれだけうるさくなった世間に対しての反抗的な印象も受けました。青木崇高さんの「刑事がシートベルトなんかしてんじゃねぇ」ってセリフも今いろんなところで問題になっているテーマですからね。観ていて気持ちいいです。僕は作り手側の人間なのでこういう意見になってしまうのかわかりませんが、映画というのはあくまでフィクションです。監督・スタッフ・役者は本気になって大嘘をつき通して、できる限りのリアリティをもたらすのです。そのフィクションの中でコンプライアンスがそれほど重要でしょうか。それを実生活で真似していいかどうかの判断は自分自身の問題であり、むしろ教育の問題な気がするのですが。僕自身数々の映画に強く影響を受けて来ていますが、現実と映画の区別はついています。自由であるはずの芸術がなぜに制約をどんどんかけられるのか。責任転嫁されているようにしか思えないんですよね。

『日本で一番悪い奴ら』は非常にそういったものに歯向かってくれている作品です。深作欣二監督がいたらこの作品は褒めていたんじゃないだろうかと僕は思ってしまいます。白石和彌監督はとても貴重な逸材だと思います。これからも持ち味をふんだんに活かして撮り続けて欲しいです。出たい!って思わされる作品が多いですもん。こういうジャンルを確立していってほしいです。

 

それではキャスト別の紹介です。

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名前のある人が出番少なかったりする稀なキャスティングの映画

出演は綾野剛・YOUNG DAIS・上野行雄・矢吹春奈瀧内公美中村倫也中村獅童・勝矢・青木崇高木下隆行ピエール瀧音尾琢真などなど。

 

綾野剛さん。よくぞこの作品に出演し、そしてここまで全うしたと思います。綾野剛さんの今の俳優としての立ち位置を考えると、二の足を踏む場合も多いかと思います。最初綾野剛さんの事務所の社長さんがプロデューサーやってるのかなと思ったのですが、全然そんな事もなく、そういったこと抜きで出演したのは綾野剛さんの映画愛なのかなぁと思います。僕この人昔は全然好きな俳優じゃなかったんです。上手いとも思わないし事務所の力で出てると勝手に思ってて。出始めの頃は小栗旬さんのバーターだったりも実際あったと思いますが。イケメン枠に入ってるのもよくわからなかったし(笑)ただ今の活動見てるとご本人自身がイケメンとか人気とかあんまり意識してなくて、俳優としてもっともっとっていう向上心の強い人なんだと思います。

あと、実際に共演してる俳優友達から話を聞くと、めっちゃいい人らしいです。人が大好きみたいですね。人間的にもかなり魅力的らしいです。素でそういう人なのか、芸能界で言ういわゆる世渡りの上手い人なのかはわかりませんが、僕としてはどちらでもいいと思います。どちらにしてもセルフプロデュースがうまいということだと思うので。

お芝居に対しても本当に真摯ですよね。決して器用なタイプじゃないと思うし、誰もが上手い俳優と思うお芝居するわけではないと思います。どんな役をやってもなんか愛してしまうキャラクターになる感じが綾野剛さんの強みかなと思います。あと本人が望んでなかったにしろ、あれだけキャーキャー言われていた人がしっかり汚れることができるってすっごい強みだと思います。売れてる同年代とか少し上の世代の俳優の中でも、一番汚れてる役とかシーンを思いっきりやってるんじゃないですかね。綾野剛さんのそういうスタイルが好きだし、おかげで今は結構好きな俳優です。ただ上手い俳優って意味では僕は名前は挙げませんが(笑)

 

瀧内公美さんは、まだあまりご存知の方も少ない女優さんかもしれませんね。今作ではかなりいい役でキャスティングされています。実は僕瀧内さんと一緒に演技ワークショップに参加してたことがありまして、何度も一緒に芝居してるんです。出会ったのはこの作品撮り終ってる後ぐらいだったと思うけど。やっぱりとってもいい女優さんです。ワークショップの時から異色な感じは出してましたね。「普通にやってもしょうがないっしょ!」みたいな雰囲気がバンバン出てて僕は好きなタイプの演技をする人でした。事務所も大きいしご本人も実力あるから、もっと出ていい女優さんだと思うんですけどね。それが芸能界の厳しいところですね。でもまだまだ活躍に期待です。

 

中村獅童さん。中村獅童さんだね~って芝居を見せてくれました。ていうかこの人演技の幅狭くないか?って思い始めたのですが、どうなんでしょうか?もっと遊べばいいのになぁって思っちゃいます。少し好き勝手やっても怒られないでしょう、もう確立してるでしょうし。今作もちょっと普通にやってて退屈でした。

 

中村倫也さんは、『孤狼の血』の後に今作を観たので、良かったですね~。至って普通の感じなんですが、ふり幅を楽しませて頂きました。ていうか完全に白石和彌監督に気に入られての『孤狼の血』への抜擢なんじゃないでしょうか。これって役者としては一番うれしいオファーの在り方で。俳優はリピートをもらえると認められたって実感できるんですよね。今も乗りに乗ってるし、しっかり結果をだす俳優だと思います。

 

ピエール瀧さんはこういう役最近多すぎです(笑)もう本人も手慣れた感じでこなしてる感がすごいです。ハマってるからいいと思うし、白石和彌監督とはもうかなりいい関係っぽいから求められているのがこういうことなのでしょう(笑)しかし好きな役者を続けて使いたがる白石和彌監督はいいっちゃいいけど新規参入が難しくなるんですよね、役者としては。気に入られちゃえばかなりいいと思うけど(笑)

 

音尾琢真さんももう白石組なんですかね。音尾さんいい役者さんですよね、上手い!って思う人じゃないけど、なんか好きです。『陸王』で初めてちゃんと観たというか、ナックスの舞台も観てるから観てるはずなんだけど印象残ってなかったみたいです。ごめんなさい(笑)ルックスを活かした芝居してて僕は好きです。オンリーワン俳優になれる人だと思います。次の白石和彌監督作品にこの人も出そうですよね(笑)楽しみです。

 

『日本で一番悪い奴ら』映画好きの人には是非とも観て頂きたい作品です。

大衆受けはなかなかしない作品だけど、僕はこういう作品が作られ続けることは絶対に必要だと思います。

hulu